商品統括からSNS発信まで、企画と現場の両面でブランドを牽引する潤間さん。シーザライトの取締役として方向性を示しつつ、若い世代に届くファッションの楽しさを自ら作り出してきました。仕事観から組織づくりまで、常に“行動と再現性”を軸に歩んできた潤間さん。その歩みと大切にしている価値観とは?
まずは、現在の役職と大まかな役割を教えてください。
役職は、シーザライトの取締役です。具体的な役割としては会社で扱う商品全体の統括がメインです。合わせて新規プロジェクトの立ち上げ、販促・SNS領域の監修にも携わっています。
あとは外部の取引先や商社と「何を、どう一緒にやるか」を詰め、社内のPRチームと連動してプロジェクトを前に進めています。YouTubeやSNSに自分が関わっている分、外向きの接点づくりは先頭に立つようにしています。
業務内容とは別に会社での立ち位置はどのように感じていますか?
まずは代表取締役の矢沢とは、お互いがブレーキ、アクセルのバランスを取れるようにしています。案件によってどちらかがアクセルを踏み、もう一方がブレーキを踏む。もちろんこれは対立するわけではなくてバランスをとるということで、言葉にしなくても描いているロードマップが近いので、お互いどう考えているかを理解した上で、足りない視点を補うという感覚です。ここは15~16年の付き合いがある強みですね。
社内での立ち位置で言うと、最終的な方向性を示しながらも、スタッフ個人がそこに向かって自分で動いていけるような環境づくりを目指して取り組んでいます。
そのために自分が決めるべきところはしっかり決める。スタッフの判断に委ねるところは委ねる。これを徹底しています。リーダーが何でも先に結論を言うと、議論がそこで止まる。だから前に出る時と引く時の配分や発言のタイミングを意識しています。
会議は「俺を納得させる場」ではなく、お客さまにとって魅力のあるコンテンツやアイテムを届けるための場だと、いつも伝えています。その上で、最終責任は自分が取る。その安心感も必ず示すようにしています。
シーザライトに入社した経緯を教えてください。
大学を卒業したあとインテリア関係の企業に入社したのですが、そこは2週間で辞めてしまいました。前から自分の中で答えが出たら決断は早い方で、仕事内容や仕事仲間の雰囲気などを見て、自分の価値観とは合わないなと感じて新人歓迎会の次の日に辞めてしまいました。
転職先を探す中で、やっぱり自分が昔からずっと好きだった洋服の仕事なら、人と違う自分にしかできない仕事ができるんじゃないかと思ってシーザライトの前身である株式会社ブロンコに入社しました。
入社した当初について教えてください。
最初配属された部署はカスタマー対応の部署だったのですが、当時はまだビジネスマナーも不十分で、電話対応から何から徹底的に指摘される毎日でした。
でもここで、お客様とのかかわり方や一般的なマナーを多く学びました。その後徐々にバイヤーとしての仕事をさせてもらうようになっていったのですが、これも正解が一つじゃない世界なので、点と点が線になるまでが苦しかったですね。
入社当時は苦労することも多かったようですが、ターニングポイントはあったのでしょうか?
25~26歳くらいのときですかね、仕事もあんまりうまくいっていなかった時にプライベートで大きく落ち込む出来事があって…。でもそれがきっかけとなって「社会的にカッコいい大人になろう」と改めて考えるようになりました。
カッコいい大人って何だろうってことなんですが、僕の中では「仕事ができる人」と「自分の武器を持っている人」がかっこいいと思っていたので、まずはそこを目指そうと、バチっと脳みそが切り替わった瞬間でした。昔の会社の先輩や知り合いに会っても「別人?」って言われるくらい変わりましたね(笑)。
そこからは、自分や周りの成功・失敗を徹底的に整理し始めました。意識してみると成功するためのヒントってそこら辺にごろごろ転がっていて、自分の実績以外でも社内のいろいろな情報や数値は見れるし、先輩たちの成功例とか失敗例とかも見れるから、20代はそれをとにかくいっぱい分析していました。その上で「自分ならこうするなぁ…」って考えてみたり、失敗した事例を見て、なぜそうなったのかを言語化したり…。
当社では社員との面談で本人が取り組んだことや成果についてフィードバックする取り組みがあるんですが、これをやり始めたのは自分で、とにかく自分で考えた“再現性のある方法”を、ちゃんと言葉と数字で残すことが大事だと考えています。
そしてもうひとつ、意識したことは「ボールが回ってくる場所に自分から身を置く」ということです。雑務でも、面倒なことが増えたとしても、チャンスが生まれそうなポジションというのがあって、しっかりそこに身を置いて徹底的に準備をする。そこで実際にボールが来た時に期待以上の成果で返すという事を徹底していましたね。

シーザライトという組織自体にもターニングポイントはあったのでしょうか?
ここは大きく2つあると考えています。
一つはZOZOTOWNへの出店、そしてもう一つは社内でYouTubeを始めた事です。
これまで当社では楽天やYahoo!などのECショッピングモールが主戦場だったのですが、今後展開していきたい商品や販売手法にハマりきらない部分があって、当時ファッション専門のECモールとしてどんどん力をつけていたZOZOTOWNにちょうど出店が決まり、こちらが提供したいものと、受け手の感性がすっと合うきっかけを作れた感覚がありました。
新しいマーケットを獲得できただけでなく、社内のポテンシャルを引き出すきっかけにもなったと思います。
そして2つ目のYouTubeですが、これを始めてから社内のSNSリテラシーや情報発信に対する理解度が上がったと考えています。ありがたいことに順調にフォロワーさんも伸びていっているというのもあり成功事例として見れたことで、「外部広告に頼るのではなく、自社発信でやっていこう」というマインドに変わったと思います。
新入社員が広告を見て応募してくれるケースや、チャンネルをきっかけにインフルエンサーと仕事ができるようになったことなど、さまざまな広がりが生まれました。
仕事をするうえで行動の指針にしていることなどはありますか?
仕事をするうえで意識していることは「大義・スピード感・第三者目線」の3つです。
一つ目の大義は「信念」と言い換えてもよいかもしれません。自分たちは何のために仕事をしているのか、私は何のために頑張っているのか、叶えたいことは何か―。ここが、仕事をするうえでのエネルギーの源になります。
僕自身はもともと「自分を通して洋服好きな人を増やしたい」という信念を持って活動しているので、自分の行為がこの信念に沿っているのか、反していないかを常に意識しています。生き方のコンセプトとして大義がないと、動けないし達成もできないと思うので、まずこれを第一に考えています。
そして二つ目はスピード感。世界中の人がいろんなことを考えている中で、自分が考え着いたアイデアでも、同じことを思いついた他の人が先にやった瞬間に、自分の考えは「コピー」に変わってしまいます。なのでまずは動いて形にする。形にしないとリアクションも経験も得られない。特にアパレルはスピードが求められる業界ですから、そこは強く意識しています。
三つ目は第三者目線。エンドユーザー視点です。どんなきれいごとを言っても、最終的に価値を決めるのはお客さまです。
「これは本当にお客さまにとって価値があるのか」「面白いと思っていただけるのか」「かっこいいと思っていただけるのか」―。そこを俯瞰してシビアに見極めること大切にしています。これは商品開発にかぎらずYouTubeでも「他の人が見て面白いのか」「1人よがりになっていないか」という目線を大切にしています。
この3つの意識はどれも大切で、どれか一つでも欠けてしまうとビジネスとしてうまくいかなくなってしまうので、ことあるごとに立ち返って意識するようにしています。
オフの時はどのようにすごしていますか?
休みの日は本当に好きなことしかしないようにしています。服が好きなので服を見に行く、友人や一緒にいて楽しい人と過ごす、買い物や食事、旅行など、嫌なことはしないと決めています。
僕の仕事はお客さまに付加価値をお渡しする仕事です。自分のメンタルや心身が不健康だと人のための付加価値を考える余裕が持てない。だからこそ、意識してオフの日はストレスなく過ごせるようにしています。
それ以外では、週2回ほどサウナに行ってリフレッシュし、最近は運動でジムにも通っています。心身ともに健康でいることはビジネスの基本なので習慣として続けるようにしています。
これから会社をどのように成長させたい、あるいは成長していってほしいと考えていますか?
まず直近の目標で言うと売上50億の達成、そして中長期で100億のステージに立つことを公言しています。
売上を上げることは数値的な事実ですが、他社様と仕事をする際、規模があるからこそ提示できるものがあります。
例えばインフルエンサーであってもフォロワー1,000人の頃から関わる仕事と、アカウントの規模が大きくなってからのプロジェクトでは、見える景色がまったく違います。
会社も同じで、規模が大きくなることで、会社を通して関われる人や仕事、ブランド、プロジェクトがより魅力的になものになっていきます。
売上は目に見える指標であり、価値を受け取った側からいただく対価です。なのでそこは明確に数字で示すことが大切だと考えています。
その上で、本質としては売上という目標を実現し、スタッフが“張りのある仕事”に取り組める場を提供したい。と考えています。
「好きな事を仕事にしたい」という想いは誰しもあると思うのですがそれをスタッフ一人一人が叶えて行くためには、まずは自分自身の行動でそれを示しつつ、会社の規模を広げる事で多くの繋がりや選択肢を用意する事が大切だと思っています。
最後にこれから未来に向けて挑戦したいことはありますか?
当社はアパレル企業として約50年やってきましたが、一方で「販売の仕方」についてもこだわり抜いてきた企業でもあります。なのでこれからはアパレルにこだわらず「物を売ることが上手い会社」「物の魅力を伝えるのが上手い会社」として、PR・広告会社的な動きができる組織になっていきたいと考えています。
時代は進み、ECを取り巻く環境も変わってきました。その中でプレイヤーとして第一線で「商品の魅力の伝え方」「見せ方」「情報発信の仕方」について考え抜いてきたことを事業として活かしていけたらと考えています。
そして、ユーザーの購買傾向が変わってきている今の状況の中で、押し売りではなく、当社のコンテンツを見たユーザーが「面白いな」「カッコいいな」と思って下さり、気づいたら注文ボタンを押してしまうような、ワクワクをお届けできる企業であり続けたいと思っています。